振動対策の実績について、振動源別に一例ずつ詳細な内容をご紹介します。
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神奈川県の幹線道路直下に、道路交通振動対策としてWIB工を施工しました(平成27年9月)。
対策前の状況:
大型車両が頻繁に通過する幹線道路沿いで、家が揺れるなどの振動苦情が住民から市に寄せられており、振動対策による住環境の改善が求められていました。
事前調査として振動計測を実施し、振動性状の分析を行いました。道路沿いの住宅の官民境界において、等間隔で4測点の振動応答を記録しました。
大型車両の通過により10~16Hzの振動が発生し、振動レベルが70dBに達することもありました。
4測点における夜間の振動レベルLmaxの平均値が約64dBであったため、目標減振値を夜間の規制基準である55dBとし、目標減振量を10dBに設定しました。現地の地盤情報、振動情報を反映させたシミュレーション解析を行い、WIB工の各諸元を検討しました。
ガス管、下水管、雨水管などの既存の埋設物に応じて、基準のハニカムセル仕様から設計変更を行いました。
道路の改修工事において、道路直下に板状ハニカムセル型のWIB工を施工しました。施工時は片側通行規制の下で、それぞれの二段階の施工となりました。
WIB工の施工後に振動計測を実施し、対策効果の確認を行いました。 対策域内における官民境界の振動レベルは、Lmaxで56~57dB、L10で47~50dBとなり、5~13dBの減振量が確認されました。また10~16Hzの支配的な振動数帯域おいて、V-50~V-70評価の振動をV-10未満に減振し、居住性を改善することができました。
神奈川県の住宅建設予定地(現 FujisawaSST)に、鉄道振動対策としてWIB工を施工しました(平成26年7月)。
対策前の状況:
住宅建設予定地の近傍を列車が通過しており、住環境への振動影響が懸念されていました。鉄道沿線に建設予定の住宅計11棟を対象に、鉄道振動対策としてWIB工を施工する計画が立てられました。
事前調査として振動計測を実施し、振動性状の分析を行いました。
貨物列車と特急列車の通過に伴って発生する鉛直振動が特に大きく、それぞれ8Hz付近と12.5Hz付近の振動が卓越していることが分かりました。
日本建築学会の居住性能評価に照らすと、地盤上における振動はV-10(100人中10が振動を感じる)未満の評価でしたが、住宅建設後の建物増幅(2階建ての場合5dB程度)を考慮するとV-10を超えるため、対策を講じる必要があると判断されました。
目標減振量を6dBに設定し、シミュレーション解析による詳細設計を行いました。
対策前の地盤モデルと、対策後の地盤モデル(建物基礎の直下にWIB工を施工)を作成し、それぞれのシミュレーションでの応答値を比較して、目標減振量6dBを達成できるWIB工の諸元の検討を行いました。
鉄道沿線に並ぶ11棟(北側敷地)の住宅直下に、版状ハニカムセル型のWIB工を施工しました。南側敷地への振動影響を考慮して、通路以外の施工箇所におけるWIB工を連結仕様とし、振動遮断を図りました。
WIB工の施工後、建物竣工前に振動計測を行い、減振効果を確認しました。
貨物列車と特急列車の卓越振動数帯域である8Hzと12.5Hzの振動が、それぞれ8dB、7dB程度減振され、建物増幅(+5dB)を考慮しても、居住性能評価でV-10を超えない振動となりました。
三重県の道路新設工事現場において、建設作業振動対策としてWIB工を施工しました(平成26年11月)。
道路新設工事に伴って発生する建設作業振動により、近隣住宅の住環境へ影響を与えることが懸念されていました。
施工平面が狭隘であること、また工事期間のみの振動対策のため安価であることが求められたので、壁状屏風型WIB工が採用され、工事区域と住宅の間(振動伝播経路)に施工しました。
対策後に振動計測を実施し、WIB工による対策効果を確認しました。バックホーの走行による振動応答を、無対策箇所とWIB工対策箇所で比較しました。 バックホーの走行により発生する10Hz以上の卓越振動を減振し、振動レベルで水平・鉛直でともに6dB以上の減振効果(振動が半減)を確認しました。
愛媛県にある製造工場の敷地内に、工場振動対策としてWIB工を施工しました(平成26年10月)。
対策前の状況:
工場内の製造機械の稼働に伴う振動が、隣接する事務所棟(S造4階建て)に伝播しており、特に3階と4階では通常業務に支障が出るほどの振動が発生しており、環境改善が求められていました。
事前調査として振動計測を実施し、振動性状の分析を行いました。
製造機械の稼働に伴って10Hz付近の低周波振動が発生し、事務所棟の3階と4階では、建物増幅も加わり大きな鉛直振動となっていました。この鉛直振動はうなり現象を伴っており、うなりのピークでは振動レベルで70dBを超えることが分かりました。
事務所棟の4階における振動レベルは最大で75dBに達しており、15dBの振動低減が必要であることが分かりました。床共振によるうなり現象の発生と振動増幅が顕著であり、当初、地盤改良のみでの減振目標の達成は難しいと考えられました。そこで、地盤改良で目標減振量に達しなかった場合は、さらに事務所棟の床梁を増強する改修工事を行い、地盤側と建物側の減振効果の総和で目標減振量を達成する計画が立てられました。
地盤改良による目標減振量を10dBに設定し、シミュレーション解析によりWIB工を設計しました。
通路の舗装を剥ぎ取り、その直下に板状ハニカムセル型のWIB工を施工しました。改良柱の施工後、セル内部の土の掘り起こしを行い、高減衰材のタイヤシュレッドを充填しました。
WIB工の施工後に振動計測を実施し、対策効果の確認を行いました。
事務所棟1階における減振量は10dBで、地盤改良による目標減振量は達成されました。さらにうなり現象を解消したことにより、3階、4階での目標減振量である15dBを達成。事務所棟の改修工事が不要となり、大きなコスト削減に繋がりました。
千葉県にある医療施設の敷地内に、微振動対策としてWIB工を施工しました(平成24年10月)。
対策前の状況:
医療施設の近傍を通過する列車による振動が、医療室内における顕微鏡を用いた業務に支障をきたしていました。
人体への影響は少なくても、精密機器を扱う工場や病院の手術室などでは微小な振動が問題となるケースがあります。
事前調査として振動計測を実施し、敷地地盤や医療室内における振動性状の分析を行いました。
列車通過時の速度応答を、精密機器の微振動許容値曲線に照らし、目標減振帯域および目標減振量を設定しました。
鉄道と医療施設の間(振動伝播経路)の敷地地盤にWIB工を施工する計画が立てられました。
地中に既存の防振壁があることが判明したため、防振壁とWIB工を組み合わせた設計を行いました。
医療施設の敷地内に、壁状WIB工と版状ハニカムセル型WIB工を組み合わせた複合WIB工を施工しました。地中防振壁と改良柱壁の間に、高減衰材のタイヤシュレッドを充填しました。
WIB工の施工後に振動計測を行い、対策効果の確認を行いました。
目標減振帯域における振動が1/2以下に減振され、業務環境が改善されました。